業務プロセスに最適なIT選定|システム候補リストアップの重要性と手順
どうもお世話になります。
株式会社Backpedal 代表の三澤達郎です。
今回は、システム候補リストアップの重要性と手順をお伝えします。
前回、業務プロセス見直しの重要性について解説しました。
前回記事にて、何度も強調しましたが、IT導入やDX導入で成果を出そうとするのであれば、業務プロセスの見直しは必須です。
今回は、そんな業務プロセスの見直しの次に行うステップ、システム候補リストアップについてお話します。
業務プロセスの見直しによって、あるべき姿を定義した後、この候補リストアップであるべき姿に最適なITを選定しましょう。
適したITを選択しないと、導入の効果、成果は十分に得られません。
この記事で得られるもの
- システム候補リストアップの手順
- 候補リストアップ時に押さえるべきポイント
- 各IT導入方式のリスク
システム候補のリストアップの手順
業務プロセスの見直し後、業務プロセスの変更が発生する箇所をどのように補っていくのかを決定します。
運用を変えるだけなのか、それともITを導入するのか。
ITを導入する場合は、その業務プロセスに合った導入するIT候補をリストアップする必要があります。
候補リストアップは以下の手順で行います。
導入方式はどのように決定するのか
見直した業務プロセスに合わせ導入方式を決定します。
システムには、大きく分けて3つの導入方式があります。
| 方式 | 機能の自由度 | 開発期間 | コスト(初期・運用) | サーバー構築・保守体制 |
|---|---|---|---|---|
| フルスクラッチ開発 | 高い 独自の機能を実装可能 | 長い 年単位で時間がかかる | 初期コストは高い 運用コストはサーバ維持費と保守費用 | 必要 サーバ構築、保守体制 |
| パッケージ導入 | 中程度 制約はあるが、独自機能実装可 | 長い 独自機能の分量次第 | 初期コストは中程度 運用コストはサーバ維持費と保守費用 | 必要 サーバ構築、保守体制 |
| クラウドサービス | 僅少 基本的には標準機能のみ | 短い 契約後、すぐに利用可能 | 初期コストは安い 運用コストは利用料のみで安い | 不要 保守体制も不要 |
細かく分けると、もっと多くの導入方式がありますが、ここでは割愛します。
フルスクラッチ開発
主な特徴は、
- 自由度高く独自機能を設けられること
- 開発期間が長く、開発費用が多くかかること
- サーバ構築や保守体制構築が必要
業務プロセスのほとんどが他社と全く異なり、かつそれが競争優位性の源である場合にあたります。
例えば、独自の製品開発プロセスや特殊なサプライチェーン管理がある場合にはフルスクラッチが最適です。
その独自性が競争優位性を生んでいることになるので、そういった場合はその業務プロセスに合わせ、0からシステム開発を行った方がいいでしょう。
通常、コストと期間の点から大企業向けです。
システムの運用や保守には、専門チームが必要になることが多いです。
パッケージ導入
主な特徴は、- パッケージの仕様制約内で独自機能を設けられること
- 開発期間がある程度必要で、開発費用がかかること(いずれも独自機能の分量次第)
- サーバ構築や保守体制構築が必要
特定の業務プロセスは標準化できるが、どうしてもカスタマイズが必要な部分がある場合にあたります。
例えば、製造業で一般的な生産管理システムをベースにしつつ、独自の在庫管理機能を追加する場合などです。
ただし、パッケージのバージョンアップや制約が影響するため、カスタマイズの比率が高くなるとフルスクラッチに近いコストと開発期間になる可能性があります。
また、パッケージの機能に影響が大きい部分は改変できないような制約があり、自由に何でも機能を変更・追加できる訳ではありません。
こちらも運用保守体制の構築が必要となることが多いです。
クラウドサービス
主な特徴は、
- 独自機能を付加することはなく、標準機能で利用する
- 契約後、すぐに利用可能で、初期コストや運用コストも安価
- サーバ構築や保守体制構築が必要
ベストプラクティスに基づいた業務プロセスで十分な場合や、コスト削減とスピード重視のプロジェクトではクラウドサービスが理想的です。
例えば、販売管理や経費精算など、他社でも一般的に行われている標準業務に適しています。
特にスモールスタートで、段階的にスケールアップしたい中小企業には向いています。
クラウドサービス製品は、基本的にはベストプラクティスをもとに開発されています。
その為、ベストプラクティスに寄せることができた場合は、IT導入の効果を最大限発揮できます。
初期コストや運用コストは安価で、利用ユーザー数で増減するような料金体系が多いです。
フルスクラッチやパッケージと異なり、自社でのサーバー構築が不要で、ブラウザ上で利用可能な為、契約後、すぐに利用できるというスピード感が特徴です。
製品によって手厚さは異なりますが、メーカーサポートが受けられるので、自社での運用保守体制は不要でしょう。
導入方式のリスクを把握しましょう
導入方式について説明してきましたが、それぞれの方式にはリスクも存在します。
システムを導入する際には、メリットとともにリスクも考慮に入れることが非常に重要です。これによって将来のトラブルを回避し、スムーズな導入が可能になります。
例えば、パッケージ導入では、カスタマイズをしすぎると、将来的にアップデートや保守が非常に煩雑になり、システム全体の維持コストが膨れ上がるリスクがあります。
また、バージョンアップ時にカスタマイズ部分が動作しなくなる可能性もあります。
他方、クラウドサービスでは、標準機能に依存する為、業務プロセスがある程度固定化されるリスクがあります。
これは特に、業務が将来的に独自性を強める必要がある場合に注意が必要です。
クラウドサービスは、既存のベストプラクティスに適合するプロセスを持つ業務や、柔軟性よりもコスト削減や導入スピードを優先する場合に最適です。
選定時に、その業務が将来的に独自性を強める可能性のあるプロセスであるかどうかを基準として持っておくべきでしょう。
それぞれのメリット、デメリット、リスク等はしっかり把握した上で、導入方式を決定します。
調査・機能比較・候補決定
世の中には様々な製品がある為、多くの候補が上がりますが、メイン機能以外の部分で機能比較を行い、候補を絞り込みます。
コスト
パッケージは、初期コストのみで運用コストは不要なケースが多いです。
ただし、サーバの維持費や運用保守体制にかかる費用が必要になります。
また、新機能追加時には、新機能の検証のみならず、既存機能の検証を行うなどの対応が必要になり、ベンダーへの検証費用が発生します。
クラウドサービスは、初期費用はなし、もしくは、安価です。
月額定額制サービスの為、運用コストとしては、月額もしくは年額でのコストがかかります。
1ユーザー追加毎に課金なのか、人数幅の中での課金なのか、データ容量での課金なのか等もあります。
最低契約期間を設けている場合もあります。
使い勝手
利用者が使いやすい、見やすい画面かどうかといった点やPC・タブレット・スマホのそれぞれに対応しているのかといった点です。
メーカーサポート体制
1社毎に問い合わせ窓口を設けている場合もあれば、製品としての窓口は1つで、各社の問い合わせが入り交じるような体制の場合もあります。
メールのみ対応、チャットでも対応可能、24時間サポート可能、等もあります。
これらのコスト、使い勝手、メーカーサポート体制、他システムとの連携、トライアル実施有無等を総合的に判断し、自社に合ったものを選定します。
3つくらいに絞れたら候補リストアップ完了です。
導入成果を得るためには業務プロセスに適したITの選定が必須
弊社は、クラウドサービスを推奨します。
初期コストや運用コストを抑えられることや利用可能になるまでの期間が非常に短いためです。
また、何度も言うようですが、業務プロセスの見直しを行い、ベストプラクティスに寄せることが重要です。
なので、それができてしまえば、フルスクラッチやパッケージを選び、独自機能を開発する理由がなくなります。
クラウドサービスのメリットとして、定期的なアップデートや新機能追加、セキュリティの強化、自動バックアップなど、自社で保守・管理する手間なく利用できる点が上げられます。
定期的なアップデートやセキュリティの強化は、利便性や安全性を高めます。
特にセキュリティは、日々新たな脅威にさらされる中で、脅威に対する対応策を迅速に講じることが被害に遭わない為の唯一の方法です。
クラウドサービス企業は、セキュリティインシデントが発生すれば、多くの契約企業に影響を与えてしまう為、ここには一番力を入れています。
他には、フルスクラッチやパッケージでは、独自機能を加える為、運用保守体制が必要となりますが、これがクラウドサービスでは不要となるというメリットもあります。
運用保守体制を組むとなると、ベンダーとの長期的な関係構築が必要ですし、継続的にコストがかかります。
また、軽視されがちですが、ベンダー任せになり、自社での運用ノウハウが蓄積しにくいという面もあります。
クラウドサービスの最大のデメリットは、機能の拡張性や自由度がなく、基本的に標準機能のまま利用する点です。
ただそれは、業務プロセスをベストプラクティスに寄せている場合に、むしろ製品にフィットするので、メリットになると捉えてもいいでしょう。
業務プロセスをどれだけベストプラクティスに寄せられるか、それでシステム導入方式が決まります。
クラウドサービスの具体例を挙げます。
ある製造業の中小企業がクラウドサービスを導入したケースがあります。
この企業は、在庫管理業務や発注業務に課題を抱えていました。
それらの業務プロセスを見直し、特定の部分を標準化しつつ、クラウドサービスを活用して全社的な業務効率化を進めました。
その結果、以下の成果を得られました。
こうした成功事例を見ると、クラウドサービスがどれだけ迅速かつ柔軟に企業の成長をサポートできるかが明らかです。
IT戦略策定、弊社がしっかりサポートします
今回は、「システム候補リストアップ」について、解説しました。
システム選定の重要性について少しでもお役に立てたなら幸いです。
PoCは、候補リストアップしたITをもとに、本当にビジョンや経営戦略の実現が可能なのかを検証するステップになります。
次回は、そのPoCについて、具体的な進め方や、実際の事例を交えながら、どのように効果を最大化できるかを解説します。
次回もお見逃しなく。
過去の記事と比較すると、今回はIT要素が入ってきている為、少し内容が複雑だったかも知れません。
ただ、現実問題として、IT導入、DX導入による成果を得るには、このステップは避けられません。
IT戦略策定は、検討に検討を何度も重ねるので、ほんとに骨の折れるような壮大なプロジェクトです。
戦略策定の後に、PoC(概念検証)という重要なステップもありますが、戦略策定としてはこのステップが最後になるので、まずはここまでしっかりやっていきましょう。
ただ、このような壮大なプロジェクトを社内の人材で行うのは、現実的に難しいかも知れません。
ITプロジェクトは、時間的リソースの不足や、専門的な知識が不足していると、実行に移すことが難しいことが多いです。
そういった人材がいない、人材がいても割く時間的リソースがない。
多くの企業が抱える課題でしょう。
そんな時は、思い切って外部業者に頼る方が得策かも知れません。
弊社は、「企業の未来を共に切り拓くIT戦略のパートナーでありたい」というビジョンを掲げ、経営戦略に沿ったIT活用を支援しています。
IT戦略策定にお悩みであれば、ぜひ一度無料相談にお申し込みください。
現在、2024年10月末までの期間限定で、無料相談を承っております。
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株式会社Backpedal代表
三澤 達郎
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